フェニルプロパノイドを用いた機能性高分子の創生
私たちの身の回りで広く利用されている高分子材料の多くは、石油を原料として作られています。しかし、石油資源には限りがあることに加え、国際情勢の変化によって原料の輸入や供給が不安定になるという課題があります。そのため、持続可能な社会の実現に向けて、植物などの再生可能なバイオマスを原料とする高分子材料が注目されています。当研究室では、植物に含まれる「フェニルプロパノイド」と呼ばれる化合物に着目し、その特徴的な分子構造を生かした機能性高分子の創製に取り組んでいます。単に石油由来原料を置き換えるのではなく、バイオマスだからこそ実現できる新しい材料の開発を目指しています。
これまでに、多様な物質と相互作用するカテコール基を持つコーヒー酸を利用し、接着機能を持つ半導体高分子や、強さと柔軟性を兼ね備えた接着材料の開発に成功しています。また、フェニルプロパノイドから作られる高分子の側鎖にさまざまな官能基を導入することで、多様な性質を付与するための基盤技術を確立しました。

主な論文
Macromolecules 2026, 59, 4982
Macromolecules 2025, 58, 8044.
Polym.J. 2024, 56, 693.
半導体高分子の精密合成と機能創発
半導体高分子は、電気を流す性質を持つ高分子材料であり、シリコンなどの無機半導体と比べて、軽量で柔軟性に優れ、溶液から薄膜を形成できるという特徴があります。そのため、曲げられるディスプレイ、身体に装着して生体情報を計測するウェアラブルデバイスなど、次世代の電子機器を構成する材料として注目されています。また、分子構造を工夫することで、半導体としての性質に加えて、柔軟性、伸縮性、接着性、自己組織化などの多様な機能を付与できます。当研究室では、半導体高分子であるポリチオフェンの構造を分子レベルで精密に制御し、新たな機能を引き出す材料設計に取り組んでいます。
これまでに、「触媒移動型縮合重合」と呼ばれる精密重合法を用いて、分子量や末端構造が制御された半導体高分子を合成してきました。さらに、その末端に官能基を導入し、クリックケミストリーを応用することで、半導体高分子鎖と柔軟な高分子鎖などを連結した新しいブロック共重合体を創製しています。これにより、電子機能と柔軟性や伸縮性を一つの材料に組み込み、変形しても機能を維持できる柔軟・伸縮性半導体の開発を進めています。将来的には、皮膚や衣服に装着して身体の動きや生体情報を計測する、次世代ウェアラブルデバイスへの応用を目指しています。

主な論文
J.Mater. Chem. C. 2023, 11, 630.
Polym. Chem. 2022, 13, 3613.
Mater. Chem. Phys. 2022, 281, 125911.
Macromol. Rapid Commun. 2020, 41, e2000148.
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